Disease of the uterus
子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣腫瘍
子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣腫瘍
子宮の内腔(妊娠中胎児が入る空間)は、子宮内膜という組織で覆われています。その子宮内膜が、本来あるべき場所以外に存在する状態を、子宮内膜症と呼びます。腰痛や腹痛、生理痛や過多月経・不妊などの原因となります。また、子宮筋腫は筋肉のこぶです。圧迫症状や生理痛・過多月経がなければ経過観察でよろしいのですが、貧血などの症状がある場合は治療対象になります。
子宮筋腫
子宮にできる良性の腫瘍で、20~50代の性成熟期に発症します。小さいものを含めると成人女性の約3分の1にみられます。悪性化はまずありませんが、悪性腫瘍(子宮肉腫)との鑑別が難しい場合があります。またその発育様式により大きく3タイプに分類され、それらは、子宮の外へ発育する漿膜下(しょうまくか)筋腫、子宮筋層の中にできる筋層内筋腫、子宮内腔方向に発育する粘膜下筋腫です。そしてそのタイプごとに症状が違い、治療法も異なります。
頻度の高い症状としては、過多月経、月経痛、下腹痛、不正出血、圧迫感、腰痛、頻尿、便秘などがあげられます。また、無症状のものはよほど大きいものでなければ、必ずしも手術の適応にはなりません。閉経後は大半の症例でエストロゲン(女性ホルモン)の分泌低下にともなって縮小していきます。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、本来子宮内部にのみ存在する粘膜細胞が、まったく別の場所で増殖してしまうという、良性ですが進行性の病気です。大別して2つのタイプがあり、1つは子宮の外(多くは卵巣)に発生するタイプで、とくに卵巣にできた場合はチョコレートのう腫と呼ばれます。もう1つは、子宮の筋肉の中に内膜が入り込み子宮が腫れるタイプで、子宮腺筋症と呼ばれます。その他、まれではありますが、子宮・卵巣以外の臓器(消化管、肺など)に発生することもあります。 頻度の高い症状としては、月経痛、下腹部痛、過多月経、腰痛、性交痛、排便痛、不妊症などがありますが、いずれも生命にかかわる病態ではありません。しかしその治療は困難であり、非常に扱い難い病気です。また中には将来、がん化する可能性があることが報告されており、その治療・フォローアップには細心の注意が必要です。
卵巣腫瘍
卵巣に発生する腫瘍で、卵巣には細胞分裂が盛んなさまざまな細胞が存在するため多種類の腫瘍が発生します。一般的には無症状であることが多いのですが、癒着が生じたり大きくなると腹部膨満感(ぼうまんかん)、下腹部痛、性器出血、便秘、頻尿などの症状が生じます。中には卵巣腫瘍茎捻転(けいねんてん)といって、卵巣腫瘍がおなかの中でねじれてしまい、その腫瘍に卵巣を養うために送られていた血液が来なくなって腫瘍が壊死(えし)に陥り、炎症などが強くなって強烈な痛みが現れることもあります。
卵巣腫瘍を発見した場合、重要なポイントは良性か悪性の鑑別です。卵巣の細胞や組織は子宮とは異なり外から採取することはできず、腫瘍マーカー(CA125など)や画像診断(超音波検査・MRI検査など)が診断の上で参考になりますが、最終診断は手術以外に方法はありません。また前述しました子宮内膜症が卵巣にできたチョコレートのう腫は将来がん化する可能性があり、とくに注意が必要です。